雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 オリバーが怪訝な顔をする。レニオスはエノレアの背後にある窓に目を向けた。
 どう見ても雨など降りそうにない青空が広がっている。

「俺には晴れているように見えるが?」
「今だけです。夕方には土砂降りです」
「なぜそう思う?」
「あそこ、見てください」

 エノレアは体の向きを少しずらし、空の一角を指差した。

「雲の形」
「雲?」
「それから風。少し冷たいです。海のほうから湿った風が来ています。そして、あの雲は少しずつ縦に伸びています」

 レニオスはエノレアの説明を聞きながら、雲に目を向ける。言われてみれば確かに縦に長いように見えるが、普通の雲だ。

「夕方には崩れます」

 断言するエノレアの様子に、レニオスは苦笑した。

「お前は天気を予言できるのか?」
「木こりは天気を読むんです。山で悪天候になると命に関わりますから」
「また木こりか。来年の採用時は、木こり経験者に優遇制度でも設けるか?」

 レニオスはからかう様に言う。
 どうやら木こりとは、知識豊富な万能職らしい。
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