雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 定例会議が終わったあと、レニオスは予定どおり外出した。以前から予定していた案件で、日程を組み直すとなると調整に手間どるからだ。

「よく晴れた外出日和です。エノレアの予想は外れそうですね」

 馬車に乗り込もうとするエドガーは、空を見上げる。

「そうだな」

 レニオスは相槌を打った。
 多少の雲は出ているものの、全体的に青空が広がっている。大雨の予兆はどこにもない。

(今回ばかりは木こりの予想が外れたか)

 ふと、戻ってきた後に外れたことを指摘したらエノレアはどんな反応を示すのだろうと考える。
 おかしいと首をかしげるのか、誤魔化すのか、はたまた逆ギレするのか。普段から掴みどころのない彼女からは、どれも想像がつかない。

 青嵐宮を出発した馬車は三十分ほどで目的地の紡績工場に到着した。
 最近外国で開発された糸紬の機械を、他の地域に先駆けてリーヴでは初めて導入したのだ。その現物を見学しながら、レニオスは工場長の説明に聞き入る。

 そのとき、外からゴゴゴ……と地鳴りのような音がした。

「ん?」

 レニオスは窓の外に目を向ける。いつの間にか、青空は灰色の雲に覆われていた。

 次の瞬間、ドッシーン! と地響きのような音が鳴る。
 耳をつんざくような音に驚く間もなく、続けて聞こえてきたのは激しい雨音だ。

「まさか、雨か?」
「そのようですね。さっきまで快晴でしたのに、雷雨とは」

 隣にいたエドガーも窓の外を見る。
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