雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「おい、そこのお前。この汚いゴミをどこかに持っていけ。目障りだ」
「は、はい」

 また別の文官が攻撃の標的にされる。彼は大袈裟なくらい震える手で必死に気を失った同僚を抱え、部屋を出て行った。
 誰も声を発する者はおらず、部屋の中がシーンと静まり返る。

「ちっ! 使えない奴らだ」

 レオナルドはコツコツと音を鳴らしながら部屋を横切り、置いてあった椅子のひとつにどしんと座る。

 白雪宮が準備した報告書については、もちろん事前にレオナルドも確認をした。その出来栄えは、決して悪いものではなかった。
 ただ、今日に限って言えば青嵐宮の出来栄えが非常によかったのだ。

 従来の報告書は、「税収」「治安」「農作物の収穫量」といった項目ごとに数字を並べるだけのものだった。白雪宮を始めとする各宮殿の文官たちはいつも通りの資料を用意した。
 
 しかし、一箇所だけいつもと違う報告書を用意した宮殿があった。青嵐宮だ。

 青嵐宮が用意したものは、治めている各地域の状況を地図と照らし合わせながら一目で把握できるよう整理され、前回の報告から何が改善し、何が悪化したのかがわかるようになっていた。

 さらに、犯罪件数の増加と失業率、収穫量の減少と物価の上昇など、一見無関係に思える数字の関連性まで簡潔な注釈として添えられている。
 そして最後には、『今後三か月で優先的に取り組むべき課題』が重要度順にまとめられていた。

「あいつ、いつの間にあんなものを作っていたんだ」
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