雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
レニオスは怯むことなく言い返してくる。
その真っ直ぐな眼差しが、無駄に整った顔立ちが、そして圧倒的に不利な状況なのに全く怯える様子がない凛とした態度が、たまらなく憎らしかった。
腹を立てたレオナルドは木剣を振り上げ、力任せにレニオスに打ちかかった。だが、レニオスは身を屈めてその攻撃をかわすと、逆にレオナルドの足元を軽く払った。
「うわっ!」
不意を衝かれた攻撃に、レオナルドは芝生の上に尻もちをつく。
「騎士のまねごとをするなら、もう少し真剣に剣の稽古をなさったほうがいいと思います」
あの冷えた眼差しを、レオナルドは一生忘れないだろう。
あんな屈辱を味わわされたのは、後にも先にもあれだけだ──。
あの日から、あの澄ました顔を見るたびに、レオナルドの胸には黒い感情が湧き上がるようになった。
年下のくせに。
妾腹の子供のくせに。
あのとき抱いた苛立ちが、再び蘇る。