雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 それは、木材を切断した際のおが屑のような香りだった。ガレスが木こりだったので、エノレアにはとてもなじみのある香りだ。

「馬車に薪でも積んだのかしら?」

 エノレアは不思議に思う。けれど、目の前の馬車はどう見ても薪を積む用途に使うようには見えない。

「つかぬことをお聞きしますが、最近この馬車に薪や作り立ての木刀などを積みましたか?」

 エノレアは、先ほどと同じ騎士に尋ねる。

「私が知る限り、ありません」
「ですよね。うーん……」

 エノレアは顎に手を当てる。

(間違いなく匂うのだけど……。どこが香りの発生源かしら?)

 馬車の周囲を一周回って眺め、特に異常がないことを確認してから今度は車輪の下側を覗き込んだ。

「エノレア? 何をしているのですか⁉」

 ちょうどそこに、レニオスとエドガーがやって来くる。エドガーは明らかに不審な行動をしているエノレアを見て、ぎょっとした。

「あ、レニオス殿下にエドガー様! 実はちょっと気になることがあって……あ、やっぱり!」

 エノレアは何かを見つけたようで、大きな声をあげる。

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