雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「ロングレイン侯爵家はリーヴ有数の名門貴族です。かの家の令嬢が侍女として殿下に迎えられれば、周囲は正式な婚約は秒読みであり、ロングレイン侯爵家が全面的にレニオス殿下を支持していると見るでしょう。ロングレイン侯爵家と懇意にしている家門も殿下を支持するはずです」
「周囲がきな臭い今こそ、足固めをすべきだと言いたいのか?」
「その通りです」

 エドガーは頷く。
 レニオスは内心で舌打ちをする。
 全く気が進まないが、エドガーが言わんとしていることは理解できた。

(気は進まないが、殺されては元も子もない。ここは提案を聞き入れるべきか……)

 レニオスははあっと息を吐く。

「……お前に任せる」
「では、ご了承いただけたと判断して進めさせていただきます」

 エドガーはほっと息を吐く。

「そろそろ夕食のお時間ですので、食事をこちらに運ばせます」
「ああ」

 エドガーは打ち合わせを終えると、部下たちがいる執務室へと向かう。
 暫くすると、一人になったレニオスの元に、夕食が運ばれてきた。

(今日は、エノレアと約束していない日か)

 暖かな湯気が立つ料理を、レニオスはひとくち食べる。なぜか、味気ない気がしてフォークを持つ手を止めた。

「あいつがあまりに美味しそうに食べるものだから、一人だと調子が出ないな……」
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