雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「エドガー」
「はいっ」
「何がおかしい」
「いいえ、何も。殿下は実に部下思いでいらっしゃるなと」
「部下の体調を管理するのも上司の役目だ」
レニオスは真顔で言い切る。
「なるほど。さすが殿下です。私の不徳の致すところでした」
エドガーは神妙な面持ちで頭を下げる。
エノレアの直属の上司はエドガーなので、体調管理するとすればエドガーの仕事だ。
「…………」
なぜかレニオスの眉間のしわが、ますます深くなった。
エドガーは今度こそ吹き出し、慌てて咳払いで誤魔化す。
「半分、運んでやれ」
「はい」
「それと、そいつに食事を用意してやれ。食べ終わるまで仕事には戻るな」
レニオスはそれだけ言うと、つかつかと自分の執務室のほうに歩いて行った。
エドガーは書類を半分エノレアから受け取ると、一緒に執務室へと歩き出す。
「エノレア」
「はい」
「殿下にものすごく大切にされている自覚はありますか?」
「もちろんです。部下思いで素敵な方ですね」