愛しのオオカミ
勢いのよいこけ方に驚く亮太と修は、すぐに美紀の元へかけ寄った。


「押花…!」

「みきちゃん大丈夫!?ものすごい元気に行ったねぇ〜…怪我とかしてない?」

「…はは…大丈夫…」


苦笑いしながら二人に答えると、ゆっくりと立ち上がり、眼鏡をかけ直すと短パンについた草を払った。
そして、立ち上がって、グッと拳をして見せる。


「ほんとに?」

「うんっ!だから、もう一回!」

「……」


亮太と修が見守られながら、美紀はもう一度走り出した。
ペタペタと走る後ろ姿を見た亮太は、片方の手を腰に当て、反対の手を口に添えた。


「……どう思う?黒井くん、アレ…」

「…走れない方だろうな」

「あ〜…まぁ…そう、ねぇ……」

「はぁっ、はぁっ…はぁっ…ど、どうだった、かな…っ」


息を切らしつつ、歩いて戻ってきた美紀は、二人の反応を伺った。
言い方に迷っていた亮太より先に、修が口を開く。


「体力以前の問題だ。走りが下手なんじゃないか?」

「え!?」

「黒井くん…せめてオブラートに包んで伝えようよ…」

「え、ぇえ…!?」


亮太の言葉でトドメをもらうと、俯いてしまう美紀。
しかし、修が走るポーズを見せてくれた。


「腕は大振りにしない。走るときはまっすぐ前を見る」

「…あ、は、はい…!」

「…それから、足はもう少し上げるといいよ~」


修から切り出すと、亮太も続いてアドバイスを告げると、美紀は確認しながら、体勢や走り出しの様子を見てもらう。


「じゃあ、今からオレと黒井くんがバトンパスの練習するから、その走り見てて~」

「……」

「わかった…!」


芝生に体育座りをして二人の様子をじっと見つめる。
亮太が走り出す様子を眺めていると、次に修に渡されて走り出す修を見て、思わず拍手をしてしまった。


「すごくきれい!スムーズなバトンパス!」

「はぁ…美紀ちゃん…はぁ…それはありがとうなんだけど…」

「…走り方は見てたのか?」

「あ、うん!黒井くんの言ってたまっすぐ前を見るって言うの、なんとなくわかった…亮太くんの言ってた足を上げる、も…わかったけどできるかなって……」


一度言葉を切ると、先ほどのスタートラインに立って、走り出すポーズを構える。
すると、修が近寄って、美紀の腕と足の位置を細かくアドバイスしていった。


「…オレ、飲み物買ってくるね~」


その様子をじっと眺めていた亮太は、少し胸を押さえてから声をかけるが、集中しているためか美紀と修からの返事はなかった。

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