愛しのオオカミ
「……当たり障りのない話だ」
「ふぅ~ん?」
真顔からニヤけ顔に戻る亮太だが、修を見る目の鈍くも鋭い視線は、向けたままだった。
ペットボトルを開けた修は、その視線に構わずゴクゴクと飲んでいく。
「亮太くん、次から飲み物買いに行くときは言ってね?一緒に行くから」
「ん~?ついでに寄った感じだし、いいよ~」
「ついで…?」
「………うん、ついで。そういえば、女子のダンスどんな?」
美紀の問いに、二パッと笑って終わらせる亮太は、首を傾げながら聞いた。
「え…えっと、こう…ばーっと広がって、向こうまで歩いて、ぐいーって進んで、わっとなるの!」
「わぁお。秀才の美紀ちゃんの語彙力がなくなるくらい、すごそうなのはわかった~」
美紀の嬉しそうな説明に、亮太は微笑ましく感じながらうんうんと頷いて聞く。
飲み終えた修は、タオルとペットボトルを置いて、二人を見た。
「土師、練習」
「お。やるきじゃん。ガチな優勝狙いに入る?」
「お前が誘ったんだ、しっかりやるぞ」
「ほいほい」
修をチラリと見た亮太は、ポケットに入れいたオレンジの長タオルと、飲み物を美紀の座る横に置いた。
そして体を起こす際に、美紀と目が合うと二パッと笑う。
「美紀ちゃんも入りたかったらおいでね~」
「わ、私は……」
亮太は美紀の返答を待たず、修と距離を開けて、バトン練習のために走り出した。
何度見てもスムーズに行われているバトンパスだが、亮太と修は途中で話をしたり、受け取る位置を確認したりした。
(…すごいなぁ……でも、仲良さそうに見えてきた…)
ひとりほっこりしていた美紀だが、ふと周囲のざわつきに気づく。
フェンス越しから多数の女子生徒が集まっているのが見えると、改めて亮太と修を見た。
「土師せんぱーい!がんばって~!」
「黒井くーん!」
黄色い声で盛り上がりを見せるフェンスだが、女子生徒が騒ぐのも無理はないと悟る美紀。
遠目からでもわかる高身長の二人は、あまりにも容姿が整っているからだ。
(も…モテてる人、初めて見た…!こういうとき、友達としてどうすれば…!?)
茶髪と黒髪、二パッと笑う亮太に対して、キリッとした目元は鋭さと冷たさを感じさせる修。
女子生徒の視界に入らないよう、なるべく気配を消してみる美紀だが、戻ってきた二人に声をかけられた。
「美紀ちゃんも練習しよ~あちー」
「…体力づくりって言ってただろ」
「あ…う、うん…」
(どうしよう…漫画展開のような怒られる声が聞こえたら…)
たらたらと汗を流す美紀は、フェンスに集まる女子生徒へ視線を向ける。