愛しのオオカミ
「きゃー!!押花さんもいる!!」
「うそ!?ほんとだ!押花さーん!」
辺りをキョロキョロしてしまう美紀に、亮太がふき出して笑った。
「ははっ、美紀ちゃんのことだよ。手でも振ってあげな?」
「え!?…えと……」
亮太の言われるまま、女子生徒に笑顔で手を振ってみると、何人かの悲鳴が聞こえてきた。
修がタオルを取って汗を拭き、飲み物を飲んでいると、亮太がチラッと視線を向ける。
「そういえば、美紀ちゃんもタオルあるんだよね?出して使おうよ~」
「え、うん…」
バッグを持ってきた美紀は、赤色の長タオルを取り出すものの、特に汗をかいているわけでもないため、首に掛けた。
「黒井くん、そのまま美紀ちゃんの横に立って」
「…は…?」
「いいからいいから~」
手招きする亮太に怪訝な顔を向けながらも、タオルを首に掛けて美紀の隣に立つ修を確認した亮太は、自分もオレンジ色の長タオルを首に掛けて女性生徒にピースサインを向ける。
「土師くんやばー!!」
「待って!三人おソロ!?」
「黒井くんの破壊力…!」
「いやー!!私の押花ちゃん!!」
さまざまな黄色い声が騒ぎ始めるのを見た亮太は、満足そうな顔で美紀と修に二パッと笑った。
「サービス。なんちて」
「……くだらない…」
「あ、はは……」
呆れる修の反応を見つつ、苦笑いする美紀たちは、各々の練習に入った。
バトンパスを見つつ、美紀の走り込みを見つつ、いつしか下校時間となっていた。
「さ~っすがに疲れたぁ~!」
「……今日はこれくらいでいいだろ」
「美紀ちゃんもお疲れさ……わぁ…」
二人の隣で、ゼェゼェと息を切らして汗を垂らしていた美紀は、言葉も発せられないほどに、へたり込んでいた。
すると、修が自分のタオルを美紀の頭に被せる。
顔を上げる美紀に合わせて修が美紀の前にしゃがみ込むと、美紀のペットボトルを取って蓋を開けた。
「きつくてもゆっくり飲め。水分補給は大事だ」
「…っ…う…ん…」
紺色のタオルを被った美紀は、修から飲み物を受け取ると、言われたままゆっくりと飲んでいく。
途中、修から背中を摩られていることに気付くと、ほんのりと赤い顔がさらに赤みを帯びた。
「黒井くん…大丈夫、だよ…」
「……あぁ」
「美紀ちゃん立てそう?」
隣で屈んで顔を覗き込んでくる亮太に、熱い顔を見られないよう紺色のタオルで隠す美紀。