愛しのオオカミ
「……ん~、バイト初日から指導してくれてさー、まぁ…シフト被ることがよくあって…なんか気になって、会うと嬉しいなぁって思って…で、好きだなって…」
「………」
「もう!恥ずかしいから、これ以上はなしね!」
顔を赤らめる莉奈の話を聞いて、ドクッと鼓動が鳴ると、美紀は莉奈をじっと見た。
(…気になって……会うと嬉しい……)
美紀の頭に、さきほど笑っていた亮太が浮かんだ、と同時に、先日の修の背中も浮かぶ。
箸を持っていた手が膝に落ちると、残り少ないお弁当の中身を見つめた。
「美紀。そういえば、何組?私のクラス青だった~」
「…あ……え、赤。赤組…」
「わ~一緒にならなかったか~…1組も赤って言ってた…どしたん?」
「え…?」
「いや、なんか…ボーっとしてるから、元気ない?」
莉奈の質問に首を横に振って返事をすると、残りのおかずを残してお弁当箱の蓋を閉じた。
ランチバッグに入れながら、桃ジュースを飲んだ美紀。
「…なんかね、楽しいって思うんだけど…なんか…うまく言えなくて、ちょっと寂しいものもあって…でも、嬉しくて…」
「…?クラスのこと?」
「う、ん……うーん。ちょっと違う…と思う…のも違う…かな…」
「なんだその言い方。なんかあったら聞くからね?」
「…ありがとう…」
ニコッと笑ってお礼を伝えると、飲み終えたジュースのパックを捨てて莉奈と別れた。
戻りはゆっくりと歩き、渡り廊下を通った際は、もう亮太たちの姿はなかった。
わずかに香る、雨を誘うコンクリートブロックの匂いを感じ取って顔を上げると、近くの空が曇っているのに気づく。
(…雨……降るのかな…)
湿った風を受けた美紀は、いつの間にか立ち止まっていた足をまた動かして、教室に戻った。
教室に入ると、男子生徒と笑う亮太を見かけ、本を読んでいる修の姿も見えた。
「……」
「あ、美紀ちゃん、今日居残り~?」
「…うん。…みんなでダンスの練習」
「押花ちゃんのダンス、めっちゃ可愛いんだよ!?」
「えぇ!?いや…へ、変なダンスで…」
近くの女子生徒が聞こえていたようで、美紀の肩を掴んで笑顔で亮太たち男子に伝える。
「可愛くて変なダンスなの?…それは楽しみだね~」
「当日は楽しみにしてね~!ね、押花ちゃん!」
「……うん…」
ニヤニヤと笑う亮太の笑みを見ると、赤くなった顔を逸らす美紀。
予鈴が鳴ると、席に着いた。
教員が入ってくると、各列に配布プリントを配っていく。
自分のもとに回ってきたプリントを、修へふり返って渡したが、視線は合わなかった。