愛しのオオカミ
「えーでは、今配ったプリントを見ながら進めますね~。じゃあ、問一の…ー」
黒板に書き出す教員の持つチョークを見ながら、ノートとプリントに書き写していく。
書き取りはしつつも、内容が頭に入ってこない。
(…一緒にいて楽しい…っていうのは、友達と何か違うのかな……?)
カツコツと聞こえるチョークの音をぼんやりと聞きながら、書き取る手を止める。
(…クラスの人や亮太くん、黒井くんを好きかって聞かれると、好きって思うけど……)
プリントをじっと見つめて考える美紀は、ひとつの疑問が頭に残った。
(友達の好きと恋愛の好きって…どう違うの…?)
そして、放課後に入ると女子グループと一緒にホールへ向かう美紀。
少しの緊張を抱えながらも、談笑して一緒に歩いた。
「押花ちゃん、土師くんと黒井くんといる頻度高いよね~」
「そ、そうかな…亮太くんが優しいから、輪に入れてもらってる感じがあるよ…」
「あ~土師くん、そういうとこあるよね~。でも、私ら嬉しいよ!押花ちゃんと話しできるし!」
「…あり、がとう…」
ふいに中学の頃を思い返してしまい、少し苦笑いして返した。
前を歩いていた女子が、ホール前で振り返って美紀をじっと見る。
「正直!…押花ちゃん、どっち!?」
「へ…」
「あー!言った!私もそれ気になってるんだけど!!」
「私もー!!三人でお揃いのタオル持ってるじゃん!?あれ、どういうこと!?そういうこと!?」
「え…っと…」
「いや待って、聞きたくない!押花ちゃんが特定の誰かを好きなのは聞きたくない!無理!ショックすぎる!!」
美紀の口が開く前に、他の女子生徒に言葉を遮られると、別の話題に移された。
少しホッとする美紀は、女子グループについて、体操着に着替えた。
ホールに集まった十数人の女子生徒が揃うと、スマホを使って曲を流し始める。
「とりあえず流してるだけだからー。あとで揃った人でやるから練習してて~」
(…練習……)
振り付けのパートが流れると、曲に合わせて踊ってみた。
手足が一緒に動いたり、上手く動かせなかったりしていると、後ろから声をかけられる。
「押花ちゃん、そこ反対ね~。こう」
「こ、こう…?」
「そうそう!あ、そこも反対ね」
「ごめんね…!ありがとう」
「前で振り付けされると、逆に覚えちゃうよね~」
「わかるわかる」
数人が美紀の周りに集まると、笑い声を上げて一緒にダンスの練習を始めた。
(…こ、これは…仲良くなるチャンス…では!?)