愛しのオオカミ
「はーい!集合して~!」
緊張を感じる美紀が口を開きかけたが、中央から声掛けするクラスメイトの方へ集まった。
全体のダンスの練習が始まると、懸命に踊ってみせるが、どうしてもリズムが合わない美紀。
「…ストーップ!…うーん、押花ちゃんがズレてる…」
「ご、ごめんね……!」
「ちょっと休憩しよ~よ~。喉乾いた~」
「じゃあ、五分の休憩ね!」
周りが掃けていく中、ひとりで振り付けを確認しながら体を動かすも、合っているかわからない美紀はニ、三人で談笑している女子へ歩み寄った。
早くなる鼓動を感じつつ、顔を上げる。
(…亮太くんみたいに…自然に…自然に…!)
「あ、あの……!こ、こここ、ここ合ってるかおせっ、教えてもらえないかな…!?」
「いいよ~。聞いて聞いて」
「一緒にやるよ!」
「あ、ありがとう…!」
ニコニコと笑って返事をしてくれたクラスメイトに、パァッと笑顔を見せると、全員が顔を背ける。
(え……?)
「あかん…あかんやつやぞ押花ちゃん…!!」
「その表情は男子の前ではしないで!!」
「…?うん…?」
「早くやろう…もうやろう」
背中を押されては休憩の時間も忘れて、一緒に踊った。
途中、間違いを正されたり、動かす際のポイントも教えてもらったりした美紀は、自然と笑みがこぼれだした。
「はーい!OK!めっちゃ完璧!押花ちゃんOK」
「…やった…!ありがとう!」
「やったね!」
「偉い偉い」
汗でズレた眼鏡をかけ直し、息切れする美紀だったが、満足げな表情を見せる。
額から垂れてきた汗を一度手で拭い、すぐに置いていたバッグの方へ行って、赤いタオルを取り出した。
「あー!!それ」
「…!?」
「例のおソロじゃん!!」
「見せて見せて!」
眼鏡を外してトントンと汗を拭いていると、美紀の周りに人が集まった。
タオルを見ていたひとりが、美紀の顔を見て驚きの悲鳴を上げる。
「ひゃー!!押花ちゃん!!なんっメガ…!眼鏡!!ない方がいい!!」
「え、あ…!」
「なんで!?」
慌てて眼鏡をかけると、両サイドをしっかりと手で固めてガードする美紀。
すると、横腹や背中を突かれて、ガードを緩めようとしてくるクラスメイトたち。
「…ふふっ、あはは…やめ…!ちょ…」
「うん。やめよう。イケナイ扉を開くわ、これ…」
「押花ちゃんあぶな…」
「でもさー、眼鏡ない方がいいよ~せっかく可愛いんだもん。コンタクトにしないの?」
「…えっと…」
質問が出てくると、美紀は気まずそうに視線を逸らして、下を向きかけた。