愛しのオオカミ
グラウンドに出ると、設営されたテントに各色の学年とクラスの生徒が集まっていく。

左から青・黄色に、入退場門の二本の太いポールを挟んで、赤・緑の色にテントがわかれており、反対には放送席や救護テントなどが設置されていた。
体育委員を始めとした各委員であろう生徒たちが、教員と話したり、道具の準備をしたりしていた。

そして、辺りには外部の来場者も、チラホラと見られる。


「黒井くん…頑張ろうね…!」

「…あぁ」


グッと拳を握って声をかけたあと、女子と男子の各列に並んで、パイプ椅子に座った。


「プログラムある~?」

「貴重品集めまーす」

「飲み物買い忘れた!」


生徒たちのさまざまな声を聞きながらも、貴重品を預けた美紀たちは、そのまま入退場門の前に列で並んだ。
しばらくして、曲が流れ始めると、放送を合図にグラウンドに入場していく。


そのままプログラム通りに、ラジオ体操から1年の100m走、3年の200m走が始まっていった。


「押花ちゃん、次の次が障害物だよ~」

「ありがとう!」

「一緒にいこー」

「美紀ちゃん」


ジャージを脱いで、同じ競技に出る生徒と一緒に向かう際に、横切る美紀に手を伸ばした亮太が手を掴んだ。
一番前の席にいる修は、ただ前を見つめている。


「頑張ってね」

「うん!」


笑顔を見せる美紀を見て、赤くなる男子生徒や女子生徒、和む生徒もなかにはいたが、修は前を見つめていた。
入退場門に着くと、一気に緊張が込み上げてくる美紀は、話しかけられても簡単な相槌しか打てなくなっていた。


(き、緊張が…1位は無理でも3…、2位くらい……いや亮太くんが優勝するって言ったから1位取ろう…!!)


放送後の笛の合図で、美紀たち競技出場の生徒がグラウンドへ入場する。
曲と共に、ピストルでスタートを切る選手たちを、美紀は緊張と不安で見守った。


「がんばってー!!」

「いけいけ~!」

(こ、こけたらどうしよう…去年みたいに…ビリだったら…)


徐々に美紀の順番が近づいてくると、胃がキリキリする感覚を覚える。
とうとう次走となり、前に詰めれば、じっと見つめてくる修と視線が合った。


(………)


美紀が小さく深呼吸すると、次の選手としてスタートラインに立った。
緊張した面持ちで、スタートの姿勢を取り、ピストルの合図で走り出した。
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