愛しのオオカミ
「左!左の方!!」
「負けんな亮太!取れ!!」
男子の方からも声が聞こえてくると、テント前でハチマキを取り合おうとする亮太のチームに、美紀はハラハラした。
亮太の相手は、ガタイの良い三年生。
「亮太くん!負けないで…!!」
「押花ちゃんが見てるなら…っ、負けらんねぇ…!」
「…っ…おあいにく、美紀ちゃんは…オレの方見てるんだわ!!」
亮太の額に巻かれたハチマキへ、勢いよく伸ばしてくる手を寸前で避けて、相手のハチマキを奪った。
女子からの歓声が上がるなか、亮太の勝利に、表情がパァっと明るくなる。
取ったハチマキを肩にかけると、襟を掴み上げて、汗を拭った亮太。
「…ケホッ…黒井くーん、テンポ早い…落ちるかと思った〜」
「…土師、右だ」
「ぅ、おぉお…!早く言って!!」
少しすると、終了の合図の笛が鳴った。
騎馬が元の位置に戻ると、判定員の生徒が、騎手が持っているハチマキを回収して回る。
テントで応援していた女子たちも、一旦席に着いて、結果発表を待った。
美紀は、自分が立ち上がっていることや、汗をかいていることに気づくと、席に座って赤いタオルで汗を拭いた。
日照りだけではなく、気温も上がっていることを感じる美紀は、ジャージを脱ぐ。
「一回戦目の結果発表です!4位青組、3位黄色組、2位緑組、1位赤組です」
「やった…!!」
「男子〜!すごいぞー!!お疲れ〜!!」
「では、二回戦目に移ります」
アナウンスを聞いた美紀は、ホッとした笑顔で、周りの女子生徒と喜び合った。
修と亮太は、流れてくる汗を拭い、二回戦と三回戦の騎馬戦を見守った。
総合結果発表は、1位が赤組であることがアナウンスされ、赤組のテントの女子は盛り上がる。
騎馬戦の選手たちが退場して、テントに戻ってくると、女子たちが声をかけて迎えた。
「土師くんナイスプレー!」
「カッコよかったよ〜!!」
「なはは…ケホッ…優勝するかんねっ」
オレンジのタオルで汗を拭く亮太は、笑いながら美紀へと視線を向ける。
美紀と目が合うと、グッと拳を握ら様子に、亮太は満面の笑みを見せた。
「ここで、水分補給の時間をとります。各生徒、来場者の方も、しっかりと水分補給をしてください」
「美紀ちゃん、黒井くん、飲み物買いに行こ〜」
「うんっ」
お揃いのタオルを持った三人は、貴重品を受け取って自動販売機へ向かう。
「二人ともすごかったね!!こう、ワッとなって!亮太くんもグイーって…!」
「なはは、美紀ちゃんの応援のおかげー。ねぇ、黒井くん?」