愛しのオオカミ
「…最後の右側の一個、取れてたはずだ」
「時間的に無理だったでしょ…」
「黒井くんも!いっぱい支えて、すっごく取りにいくチーム…?の方見てたよね!」
「……」
首にかけた紺色のタオルで汗を拭く修は、キラキラと目を輝かせて見上げてくる美紀から顔を逸らした。
口元を隠しながら、呟く修。
「……優勝するんだろ」
「うん…!うん!!」
「お。まだ人少ないじゃん。ラッキーだね」
笑顔で頷く美紀たちをよそに、自動販売機前に並ぶ人の後ろに並ぶ三人は、各々の飲み物を買った。
「あ。そだ」
美紀と修は、さっそく購入したペットボトルの蓋を開けて、飲み物を飲んでいく。
亮太はスマホを取り出して、パッと手を上に上げた。
「美紀ちゃん、黒井くん。はいはい、撮るよ〜」
「えっ、え…!?」
「……」
「はい、ピース」
カシャッというシャッター音が聞こえたあと、撮影したデータを見返す亮太は、じっと見てから微笑んだ。
(へ、変な顔してなかったかな…)
「これ、あとで美紀ちゃんに送るね〜。黒井くんは…MIME交換しとく?」
「あ、じゃあ私が黒井くんに送るね」
「え…?美紀ちゃん、黒井くんと交換してたの!?いつ!?」
ニコニコと笑って、スマホを取り出していた美紀に、亮太は少し詰め寄った。
驚く美紀だったが、笑顔で答える
「体育祭が始まる前…この前くらい、かな」
「……戻るぞ」
顔を引き攣らせる亮太を残し、グラウンドへと足を進める修に、美紀はついていった。
渋々と修の横に並んだ亮太は、チラリと修を見る。
「黒井くんさ〜…せこくない?てか、ちゃっかりしてない?」
「…何がだ」
ジロッと横目で見返すと、亮太の目が一瞬、鈍く光った。
「抜けがけするなって意味」
「……必要だから交換しただけだ」
囁くように、修だけに聞こえる声音で言うと、亮太はニパッと笑った。
亮太の言葉で、修も鋭い眼差しで見返す。
「ふ〜ん?……あ、美紀ちゃん送っといたからね〜」
「う、うん…!」
美紀の隣に移った亮太は、汗を拭く美紀の頬に手を伸ばした。
「…美紀ちゃん、顔赤いね。大丈夫?」
「へ…は、う、うん…っ」
心配した表情を見せる亮太の手が頬に触れると、驚いて肩が跳ねる美紀。
「今日、結構暑いから、無理しないでね」
「ありがとう…あ!そうだ!二人ともありがとう!」
ハッと思い出した美紀は、立ち止まって二人に頭を下げた。
「あのね!こけなかったし、最後まで走れたよ!…に、2番だったけど…」
「やったね。美紀ちゃんの頑張りだよ」
「…あぁ、そうだな」
美紀が顔を上げると、亮太がポンポンと頭を撫でる。