先輩の愛に溺れる。

第六章

翌日の昼休み。
春の光に包まれた学園の中庭は、生徒たちの笑い声でにぎわっていた。

セレナはひとりで回廊を歩きながら、少しだけ落ち着かない気持ちを抱えていた。
昨日の図書室でのことが、まだ胸に残っている。

レオネル王子に秘密を見抜かれたこと。
そして、ルシアンがすぐに来てくれたこと。

思い出すだけで胸が熱くなるのに、同時に不安も消えない。
そんな気持ちのまま中庭へ出た、そのときだった。

「セレナ嬢」

聞き覚えのあるやわらかな声に、足が止まる。

噴水のそばに立っていたのは、レオネルだった。
今日も整った笑みを浮かべていて、周囲の視線を自然に集めている。

「少しだけ、お時間をいただけますか」

そのひと言に、近くにいた生徒たちがざわめいた。
王子が、またセレナに話しかけている。そんな空気が一気に広がっていく。

「殿下、私は……」

「警戒しないでください。今日は困らせるつもりはありません」

そう言ってレオネルは、セレナの前で足を止めた。

「ただ、確かめたいことがあるのです」

まっすぐ向けられる碧い瞳に、セレナの心が揺れる。
周囲の視線も集まっていて、逃げ出したいのに逃げられない。
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