先輩の愛に溺れる。
周囲のざわめきは、まだ収まらない。
それでもルシアンはしばらくセレナを離さなかった。

「……今の、反則だ」

ぽつりと落ちた声に、セレナは瞬きをする。

「え?」

「みんなの前でそんなふうに言われたら、もう無理」

ルシアンは少しだけ顔を伏せ、セレナの肩口に額を寄せた。
珍しく余裕のないその姿に、胸がきゅんとする。

「先輩……」

「嬉しすぎて、今すぐ連れて帰りたい」

「帰るって、どこにですか」

「誰にも見られない場所」

真顔で言うから、セレナはますます赤くなる。

ルシアンはそんな彼女を見て、ようやく少し笑った。

「でも今日はこれで我慢する」

そう言って、髪にそっと口づける。

「よく言えたな」

褒めるような甘い声に、セレナの胸はいっぱいになる。

人前で抱きしめられて、恋人だと宣言されて。
恥ずかしさは消えない。けれどそれ以上に、ルシアンの想いがはっきり伝わってきて、心があたたかかった。

王子という大きな存在が現れても、ふたりの気持ちは揺らがない。
むしろ確かめ合うたび、もっと強く結びついていく。

それはきっと、誰にもほどけない恋だった。
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