先輩の愛に溺れる。
レオネルはしばらく二人を見つめていたが、やがて小さく息をついた。

「なるほど。答えは聞くまでもなかったようですね」

その言い方は穏やかだった。
けれど完全に諦めたわけではないと、どこかでわかる。

「ですが、セレナ嬢」

改めて名前を呼ばれ、セレナはルシアンの腕の中から顔を上げる。

「もし彼の手が届かない場所で困ることがあれば、そのときは私を思い出してください」

やさしいのに、意味深な言葉だった。

けれど今度のセレナは、もう迷わなかった。

ルシアンの制服をきゅっとつかんだまま、まっすぐレオネルを見る。

「ありがとうございます。でも、大丈夫です」

小さな声だった。
それでも、自分でも驚くほどはっきり言えた。

「私がいちばんそばにいてほしいのは、ルシアンです」

一瞬、空気が止まった気がした。

次の瞬間、ルシアンの腕がさらに強くなる。
恥ずかしいくらい近いのに、今はそれが嬉しい。

レオネルは少しだけ目を伏せ、それからいつもの優雅な笑みを浮かべた。

「負けましたよ。今は、ですが」

意味を残すようにそう言って、王子は静かに去っていった。
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