極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
プロローグ
床から天井まで続くガラスの向こうには、一面夜の海が広がっている。
海上に浮かんでいるかのような光景は、まるで自分が海の中に浮いているみたいだ。
広い空間の中心には低く設えられたベッドがある。真っ白なリネンは皺ひとつなく整っていた。
ベッドルームに入った瞬間、室温が若干下がったのを感じた。
触れ合ったときに心地良い温度に設定されていたのだと今になって気づく。
「久しぶりだな」
低く抑えた声。
散々口づけで翻弄した後、呼吸ひとつ乱さず彼は微笑する。
この彫刻のように整った顔が悪戯に意地悪に変幻するのを私は知っている。
頷くより先に、シーツに縫い付けるようにして指先が搦め捕られる。逃がさないように、強く。
首筋に吐息を感じて、そっと目を閉じた。
初めてではないのに、鼓動が尋常じゃないほど高鳴っているのは久しぶりだからだろうか。それとも……。
< 1 / 40 >