極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~


 創史さんと結婚した当初は、お義母様の使用していた部屋を与えられた。黒川に嫁いだ者に与えられる部屋──。しかし、創史さんが渡米してすぐ、その部屋を空けるように言われた。

 階段を上がっていき、彫刻が施された重厚な木の扉を押し開ける。

 朝、出がけにカーテンを引いていかなかったから、室内は西に落ち始めた夕日で温かい色の陽が入り込んでいた。

「ただいま……」

 自室に入ってやっと気が抜ける。この家の中で私が唯一ホッと気を許せる場所だ。

 同時に、ひとりになるとどうしようもない孤独が襲ってくるのも事実。

 この広すぎる黒川の家の中、私は常に孤立無援。

 どんなに気遣ってくれる使用人さえ〝黒川家の妻として相応しいか〟というレンズを通して私を見ているのがわかる。

 創史さんの妻という立場でいる限り、義両親にも紫乃さんにも顔向けができる嫁でいなくてはならない。

 常に完璧でいようと心がけていても、そもそも歓迎されない相手だった私の見方が変わるわけではないけれど、それでも創史さんのために自分の役割を全うする。

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