どん底の中で、救ってくれたのは君でした。ー元歌姫の私と、君がくれた光の物語ー
すると先輩は一歩だけ距離を詰めて、私にしか聞こえない声で告げた。

「その声。忘れるわけないだろ」
「昔、何度も聴いた」

息が止まる。

知られてる。
この人は、私が誰なのか知ってる。

逃げなきゃ。
そう思うのに、足が動かなかった。

「安心して。誰にも言わない」

「……信じられません」

「だろうね」

即答されて、少しだけ目を見開く。
でも先輩は困ったように笑って、それからまっすぐ私を見つめた。

「じゃあ、自己紹介くらいはちゃんとさせて」
「三年の来栖ノ蓮。君の秘密を知ってる、たぶん最悪な先輩」

「…………」

「でも、君を傷つけるつもりはない」

その声音は静かだった。
静かなのに、なぜか嘘には聞こえなかった。

来栖ノ先輩。
学園でも有名なのか、すれ違う生徒たちがちらちらとこっちを見ている。
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