どん底の中で、救ってくれたのは君でした。ー元歌姫の私と、君がくれた光の物語ー
しかも、その視線はほとんど先輩に向けられていた。

こんな人が、どうして私なんかにかまうの。

「俺はずっと、君に会いたかった」

「……え?」

「やっと見つけた」

心臓が、どくんと大きく鳴った。

そんなこと、まるでずっと探していたみたいな言い方で。
知らないはずの先輩にそんな目を向けられて、息が苦しくなる。

「会いたかったって……私、あなたのこと知りません」

「君は知らなくていいよ」

「よくないです」

思わず言い返すと、先輩は少しだけ驚いた顔をしたあと、ふっと笑った。

「そっか。ちゃんと怒れるんだ」

その言い方が、少しだけ私を子ども扱いしているみたいでむっとする。
けれど次の瞬間、先輩の長い指がそっと私の前髪に触れた。

「……っ!」

反射的に後ずさろうとしたけれど、逃げるより先に先輩がぴたりと手を止める。

「ごめん。怖がらせた」

低く落ちた声が、思ったよりずっと甘かった。

「ただ、無理して笑ってる顔が痛々しくて」
「そんな顔、しなくていい」

その言葉に、胸の奥がじわりと熱くなる。

今まで誰にも言われなかった。
みんな、私が平気なふりをすれば、それで納得して離れていったから。
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