明日になれば、きっと。
笑顔の練習
次の日の朝。
いつも通り陽菜と一緒に登校をしていると、陽菜が
「昨日の放課後何したの?」
と聞いてきた。
「写真部に行ってたんだ。」
陽菜は驚いた声を上げた。
「桜、写真部に入るの!?」
写真を撮ってもらうことになったと言うべきか悩んだが、陽菜だから言っておいた方がこれからもやりやすいか、と思い、言うことした。
「入るつもりだけど、実は、清水くんに写真を撮ってもらうことになって。」
すると、寝起きで元気のなかった声が急に明るくなった。
「それって、被写体になるってこと!?凄いじゃん!」
陽菜には関係ないことなのに、自分のことのように喜んでくれた。いい友達を持ったな。と改めて思う。
「そうかな。でも、写真のテーマにたまたま私が合ってる。って思ってくれただけだよ。文化祭のためだしね。」
そういうと陽菜が、
「桜って写真撮られるの嫌いだったっけ?」
と聞いてきた。そういえば、写真写りが悪いというのは陽菜に話したことがあったかもしれない。
「嫌いってわけじゃないけど…写真写り悪いから。」
すると陽菜がむすっとした顔をして言った。
「そんなの気にしなくていいじゃん。桜はもっと自分に自信を持っていいんだよ!!私くらいね!」
そういってニカッと笑った。
太陽を直接眺めているみたいに、陽菜の存在は私には眩しかった。
陽菜が太陽なら、私は月だ。
気にしないなんて無理だよ。人から変わってるって思われることがどれだけ怖いことなのか。
人と違うってどれだけ不安なのか、陽菜は分かっていない。
自信を持つなんて、私には無理だ。
自分に自信がなくて、だから周りに合わせてばっかで。だけど、合わせてることをバレたくない。
わがままで、卑怯な人間だ。こんな私が陽菜の友達でいていいのかな。
その日は、ずっとそんな事ばかり考えていて、気がついたら放課後になっていた。
「花城さん!さっそくテーマを考えてきたんだけど
今日大丈夫?」
私を待たせないようにしてくれたのだろうか。昨日の今日でテーマを考えてきてくれるなんて、本当に一生懸命な人だな、と思った。
「うん。大丈夫だよ。どんな感じにする予定なの?」
そう聞くと、困ったように眉を下げて言った。
「実は…撮りたいイメージがありすぎて、選びきれてないんだ。だから花城さんがどれで撮りたいか聞こうと思って!」
・校庭で歩いているところ。
・友達と話しているところ。
・笑っているところ。
・空を眺めているところ。
「花城さんに合うイメージが沢山ありすぎて悩んでるんだ!花城さんはどれがいい?」
どれもいいと思った。けれど、やっぱり、みんなが知っている私なら、笑っているところだろう。
「笑っているところ、かな?写真写りもその方がいいから。」
そう笑うと、清水くんは満足したように頷いて、早速取りに行こう!と、私の腕を引っ張りながら、撮影場所まで足を運んだ。
清水くんが選んだのは、廊下だった。教科書や筆箱を手に持って、片手で髪を耳にかけながら振り返って笑ったところを写真に収めたいらしい。
指示してくれた通り、私はいつも通りの笑顔を作った。
撮った写真を確認している清水くんが、目を細めて言った。
「…なんか違うな。」
しまった、と思った。
清水くんが言ったのは、撮りたいイメージの写真と私が合わなかったからだと思ったからだ。
「やっぱり私、写真写り悪いよね。」
気を遣わせないように、ははっ、と笑いながら言った。
「あっ、いや、そういう意味じゃなくて…。」
そういう意味じゃない?じゃあ、どういう意味で言ったんだろう。
「なんか、笑ってるけど、無理してるように見える、っていうか。」
ドキッとした。どうしよう、上手く笑えてなかったのかな。いや、多分初めてだから緊張してただけだ。
そうだ。きっと。
「初めてだから緊張したのかも…。」
もう1枚撮ってみよう。と、清水くんが言い、もう一度同じポーズでさっきよりも笑顔を意識した。
何度撮っても、清水くんの感じる違和感はなくならなかったみたいで、私は半分、諦めていた。
「花城さんってさ…写真撮る時だけそんなに笑う?」
突然言った清水くんの言葉に、え、と思ってしまった。
「ごめんね、また練習してくるから、続きは明日でもいいかな?」
このままここに居たら、自分を見失ってしまう気がした。
「うん。もちろん!練習してくれるのはありがたいけど、無理はしないようにね!」
いつも通りの笑顔に戻り、安心した。
また明日、と手を振り別れる。
やっぱり、私に『ありのまま』のテーマなんて合わないんだ。自分に自信があって、自分をちゃんと持っていたのが遠い昔過ぎて、ありのままがどんなのかすら、分からなくなってしまった。
とりあえず、引き受けたのは私なんだから、ちゃんとやらなきゃ。せっかく撮ってもらってるんだから迷惑なんてかけられない。
その日は、帰ったら、すぐ部屋に戻って、鏡を見ながらミリ単位で笑顔の練習をした。
ちゃんと、笑わなきゃ。
それだけが、私の頭にぐるぐると渦巻いていた。
いつも通り陽菜と一緒に登校をしていると、陽菜が
「昨日の放課後何したの?」
と聞いてきた。
「写真部に行ってたんだ。」
陽菜は驚いた声を上げた。
「桜、写真部に入るの!?」
写真を撮ってもらうことになったと言うべきか悩んだが、陽菜だから言っておいた方がこれからもやりやすいか、と思い、言うことした。
「入るつもりだけど、実は、清水くんに写真を撮ってもらうことになって。」
すると、寝起きで元気のなかった声が急に明るくなった。
「それって、被写体になるってこと!?凄いじゃん!」
陽菜には関係ないことなのに、自分のことのように喜んでくれた。いい友達を持ったな。と改めて思う。
「そうかな。でも、写真のテーマにたまたま私が合ってる。って思ってくれただけだよ。文化祭のためだしね。」
そういうと陽菜が、
「桜って写真撮られるの嫌いだったっけ?」
と聞いてきた。そういえば、写真写りが悪いというのは陽菜に話したことがあったかもしれない。
「嫌いってわけじゃないけど…写真写り悪いから。」
すると陽菜がむすっとした顔をして言った。
「そんなの気にしなくていいじゃん。桜はもっと自分に自信を持っていいんだよ!!私くらいね!」
そういってニカッと笑った。
太陽を直接眺めているみたいに、陽菜の存在は私には眩しかった。
陽菜が太陽なら、私は月だ。
気にしないなんて無理だよ。人から変わってるって思われることがどれだけ怖いことなのか。
人と違うってどれだけ不安なのか、陽菜は分かっていない。
自信を持つなんて、私には無理だ。
自分に自信がなくて、だから周りに合わせてばっかで。だけど、合わせてることをバレたくない。
わがままで、卑怯な人間だ。こんな私が陽菜の友達でいていいのかな。
その日は、ずっとそんな事ばかり考えていて、気がついたら放課後になっていた。
「花城さん!さっそくテーマを考えてきたんだけど
今日大丈夫?」
私を待たせないようにしてくれたのだろうか。昨日の今日でテーマを考えてきてくれるなんて、本当に一生懸命な人だな、と思った。
「うん。大丈夫だよ。どんな感じにする予定なの?」
そう聞くと、困ったように眉を下げて言った。
「実は…撮りたいイメージがありすぎて、選びきれてないんだ。だから花城さんがどれで撮りたいか聞こうと思って!」
・校庭で歩いているところ。
・友達と話しているところ。
・笑っているところ。
・空を眺めているところ。
「花城さんに合うイメージが沢山ありすぎて悩んでるんだ!花城さんはどれがいい?」
どれもいいと思った。けれど、やっぱり、みんなが知っている私なら、笑っているところだろう。
「笑っているところ、かな?写真写りもその方がいいから。」
そう笑うと、清水くんは満足したように頷いて、早速取りに行こう!と、私の腕を引っ張りながら、撮影場所まで足を運んだ。
清水くんが選んだのは、廊下だった。教科書や筆箱を手に持って、片手で髪を耳にかけながら振り返って笑ったところを写真に収めたいらしい。
指示してくれた通り、私はいつも通りの笑顔を作った。
撮った写真を確認している清水くんが、目を細めて言った。
「…なんか違うな。」
しまった、と思った。
清水くんが言ったのは、撮りたいイメージの写真と私が合わなかったからだと思ったからだ。
「やっぱり私、写真写り悪いよね。」
気を遣わせないように、ははっ、と笑いながら言った。
「あっ、いや、そういう意味じゃなくて…。」
そういう意味じゃない?じゃあ、どういう意味で言ったんだろう。
「なんか、笑ってるけど、無理してるように見える、っていうか。」
ドキッとした。どうしよう、上手く笑えてなかったのかな。いや、多分初めてだから緊張してただけだ。
そうだ。きっと。
「初めてだから緊張したのかも…。」
もう1枚撮ってみよう。と、清水くんが言い、もう一度同じポーズでさっきよりも笑顔を意識した。
何度撮っても、清水くんの感じる違和感はなくならなかったみたいで、私は半分、諦めていた。
「花城さんってさ…写真撮る時だけそんなに笑う?」
突然言った清水くんの言葉に、え、と思ってしまった。
「ごめんね、また練習してくるから、続きは明日でもいいかな?」
このままここに居たら、自分を見失ってしまう気がした。
「うん。もちろん!練習してくれるのはありがたいけど、無理はしないようにね!」
いつも通りの笑顔に戻り、安心した。
また明日、と手を振り別れる。
やっぱり、私に『ありのまま』のテーマなんて合わないんだ。自分に自信があって、自分をちゃんと持っていたのが遠い昔過ぎて、ありのままがどんなのかすら、分からなくなってしまった。
とりあえず、引き受けたのは私なんだから、ちゃんとやらなきゃ。せっかく撮ってもらってるんだから迷惑なんてかけられない。
その日は、帰ったら、すぐ部屋に戻って、鏡を見ながらミリ単位で笑顔の練習をした。
ちゃんと、笑わなきゃ。
それだけが、私の頭にぐるぐると渦巻いていた。