ベリーズカフェ15周年記念オリジナル短編『幸せのバタートースト』坂井志緒/著
あれから二週間が経過した。ゴールデンウィークが明け、世間は日常を取り戻している。
ゴールデンウィーク休暇の間も、私は毎朝きっちりメイクをしてボスケへと通った。御園さんは、連休の前半は毎日店へ来たけれど、後半は一日しか来なかった。ホテル業を営む彼にとって、行楽シーズンは書き入れ時だ。多忙に違いない。
別に毎朝ここで一緒に朝食をとる約束をしているわけではないけれど、彼が来ない日はバタートーストがちょっぴり味気ない。彼との朝がすっかり生活の一部になっているのだと自覚して、胸がむずがゆい。
「おはよう、明菜さん」
今日も彼が、当然のように私の向かいの席に座った。
「おはよう、御園さん」
「いい加減〝司〟って呼んでくれない?」
「それはまだいいかな」
「ちぇー」
以前と比べて、私たちの間には格段に会話が増えた。軽口を叩くこともあるし、仕事のことについてまじめに話すこともある。
「じゃあ、私そろそろ行くね」
「うん。行ってらっしゃい」
いちばん変わったのは、プライベートの連絡先を交換したことで、顔を合わせない日にも言葉を交わすようになったことだ。
今日は私が店を出たところで、彼からメッセージが届いた。
【今日も綺麗だね。会えて嬉しかった】
思わず窓越しに彼を見る。彼は笑顔で、スマートフォンを持つ手を振っている。
「……バカ」
私はむっと顔をしかめて見せて、逃げるように早足で会社へと向かった。こんな顔でもしていないと、頬がゆるんでしまう。こんなにもふわふわした気持ちなのだから、顔くらいはキリッと引き締めておかないと、社員たちに示しがつかない。
……そう思っていたのだが。
「おはようございます、社長。あれ、なんかいいことありました?」
あとから出社して来た久美ちゃんに、そう言われてしまった。
「ど、どうしてそう思ったの?」
「だって社長、ハッピーオーラ全開じゃないですか」
「えっ! そんなオーラ出してるつもりないんだけど」
「勝手に溢れ出るものなんですよ。ハッピーといえば、社長。コラボの提案に前向きな返信をくれた企業があるんです!」
コラボという言葉で、瞬時に頭が仕事モードへと切り替わる。私は急いで自分のデスクのパソコンを開き、立ち上げた。
返信をくれたのは、地方のとあるテーマパークだった。そのテーマパークのキャラクターをモチーフとしたネイルシールをグッズとして展開することを提案したのだが、メールを読む限り、とても感触がいい。
「これは……、忙しくなりそうだね」
「はい!」
ゴールデンウィーク休暇の間も、私は毎朝きっちりメイクをしてボスケへと通った。御園さんは、連休の前半は毎日店へ来たけれど、後半は一日しか来なかった。ホテル業を営む彼にとって、行楽シーズンは書き入れ時だ。多忙に違いない。
別に毎朝ここで一緒に朝食をとる約束をしているわけではないけれど、彼が来ない日はバタートーストがちょっぴり味気ない。彼との朝がすっかり生活の一部になっているのだと自覚して、胸がむずがゆい。
「おはよう、明菜さん」
今日も彼が、当然のように私の向かいの席に座った。
「おはよう、御園さん」
「いい加減〝司〟って呼んでくれない?」
「それはまだいいかな」
「ちぇー」
以前と比べて、私たちの間には格段に会話が増えた。軽口を叩くこともあるし、仕事のことについてまじめに話すこともある。
「じゃあ、私そろそろ行くね」
「うん。行ってらっしゃい」
いちばん変わったのは、プライベートの連絡先を交換したことで、顔を合わせない日にも言葉を交わすようになったことだ。
今日は私が店を出たところで、彼からメッセージが届いた。
【今日も綺麗だね。会えて嬉しかった】
思わず窓越しに彼を見る。彼は笑顔で、スマートフォンを持つ手を振っている。
「……バカ」
私はむっと顔をしかめて見せて、逃げるように早足で会社へと向かった。こんな顔でもしていないと、頬がゆるんでしまう。こんなにもふわふわした気持ちなのだから、顔くらいはキリッと引き締めておかないと、社員たちに示しがつかない。
……そう思っていたのだが。
「おはようございます、社長。あれ、なんかいいことありました?」
あとから出社して来た久美ちゃんに、そう言われてしまった。
「ど、どうしてそう思ったの?」
「だって社長、ハッピーオーラ全開じゃないですか」
「えっ! そんなオーラ出してるつもりないんだけど」
「勝手に溢れ出るものなんですよ。ハッピーといえば、社長。コラボの提案に前向きな返信をくれた企業があるんです!」
コラボという言葉で、瞬時に頭が仕事モードへと切り替わる。私は急いで自分のデスクのパソコンを開き、立ち上げた。
返信をくれたのは、地方のとあるテーマパークだった。そのテーマパークのキャラクターをモチーフとしたネイルシールをグッズとして展開することを提案したのだが、メールを読む限り、とても感触がいい。
「これは……、忙しくなりそうだね」
「はい!」