ベリーズカフェ15周年記念オリジナル短編『幸せのバタートースト』坂井志緒/著
 この日は松川さんを含むテーマパークのみなさんと直に話をさせてもらい、スケジュールや権利関係など、さまざまなことが驚くほどスムーズに決定した。特に驚いたのは、想定される発注量だ。

「え、こんなにたくさん?」

「はい。初回は様子見でこれくらい、という感じです。二度目、三度目の生産をお願いする可能性もありますので」

「わかりました。そのつもりで準備させていただきます」

 と即答したのはいいものの、考えなければならないことも増えた。まずは生産ラインとスケジュールの見直し。あ、その前に素材を確保しなければ。

 夜、テーマパークのみなさんとの会食を終え、宿泊先のホテルへと戻った。自分の部屋に着くなり、私はパソコンを開いてネイルシールの素材を仕入れている商社へメールを入れた。テーマパークのシールを生産するまでにはまだ時間があるが、必要な素材のすべてがすぐ手に入るかはわからない。近いうちに、商社とも細かい打ち合わせをする必要があるだろう。

「はぁ……、疲れた……!」

 パソコンを閉じ、ベッドへと寝転ぶ。少し前まで悩んでいたのが嘘みたいな状況だ。

 自分の力のなさが悔しくて、泣いて、それを見られて……御園さんに美味しいお酒をごちそうになりながら慰めてもらったんだっけ。〝次のデート〟は、まだできていない。今度は私がおごるって決めているのだが、なかなかタイミングが合わない。

「会いたいな……」

 思わず口から出していた。ひとりきりの部屋に、小さく響く。

 今日は朝イチで飛行機に乗らなければならなかったので、ボスケには行っていない。当然明日も無理だ。

 次に会えるのはいつかな。仕事が前向きに動きはじめたこと、報告したいな。今度は私から誘ってみよう。この間のバーほどではなくとも、素敵なお店を探しておかなくちゃ。

 私は彼のことを考えながら、そのままベッドで寝落ちした。
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