ベリーズカフェ15周年記念オリジナル短編『幸せのバタートースト』坂井志緒/著
大貫さんとの打ち合わせが終わったのは、アフタヌーンティーのラストオーダー直前だった。途中から飲み食いを忘れて話し込んでいたので、ポットの紅茶がすっかり渋くなっているし、スタンドに残ったスイーツも乾燥しはじめている。
「それでも、充分美味しいですね。さすがはシャトー・ジャルダンだ」
「そうですね。私も今度、どなたかとの打ち合わせで使ってみようかしら」
「僕との打ち合わせに使っていただいてもいいんですよ?」
「あはは、そうですね。今度は弊社の立石も一緒に」
「ええ、ぜひ」
テーマパークとのコラボについて、最も心配していた素材についての方向性が決まり、ずいぶん肩の荷が軽くなった。気が抜けたことで、大貫さんとの会話がぐんと弾む。テーブルに近づいてくる人物がいることにも、気づかないくらいに。
「森川様。お話中、失礼いたします」
突然声をかけられ、驚いてびくりと肩が震えた。声の主は、私が座るソファーの脇に片膝をつき、私を見上げている。
「みっ……御園さん……?」
どうしてここに? 女性と一緒じゃなかったの?
彼はさっきのパーカー姿ではなく、きっちりと仕立てのいいスーツを着ているし、ホテルのスタッフであることがわかる金色のネームプレートを付けている。「森川様」だなんて、ずいぶん他人行儀だ。なるほど、仕事モードか。
「お顔が見えましたので、ご挨拶をと思いまして。本日は当ホテルのご利用、誠にありがとうございます。ご同席のお客様も、ご来館ありがとうございます」
御園さんは私に頭を下げ、それから大貫さんにも丁寧に頭を下げた。上品な笑みを浮かべているけれど、目が笑っていない気が……いや、気のせいかもしれない。
「ご丁寧にありがとうございます。森川社長、お知り合いですか?」
「ええ。このホテルのマネージャーの御園さんです。御園さん、こちらはうちが素材を仕入れさせていただいている商社の大貫さん。今日は彼が、打ち合わせ場所としてここに招待してくださったんです」
「それでも、充分美味しいですね。さすがはシャトー・ジャルダンだ」
「そうですね。私も今度、どなたかとの打ち合わせで使ってみようかしら」
「僕との打ち合わせに使っていただいてもいいんですよ?」
「あはは、そうですね。今度は弊社の立石も一緒に」
「ええ、ぜひ」
テーマパークとのコラボについて、最も心配していた素材についての方向性が決まり、ずいぶん肩の荷が軽くなった。気が抜けたことで、大貫さんとの会話がぐんと弾む。テーブルに近づいてくる人物がいることにも、気づかないくらいに。
「森川様。お話中、失礼いたします」
突然声をかけられ、驚いてびくりと肩が震えた。声の主は、私が座るソファーの脇に片膝をつき、私を見上げている。
「みっ……御園さん……?」
どうしてここに? 女性と一緒じゃなかったの?
彼はさっきのパーカー姿ではなく、きっちりと仕立てのいいスーツを着ているし、ホテルのスタッフであることがわかる金色のネームプレートを付けている。「森川様」だなんて、ずいぶん他人行儀だ。なるほど、仕事モードか。
「お顔が見えましたので、ご挨拶をと思いまして。本日は当ホテルのご利用、誠にありがとうございます。ご同席のお客様も、ご来館ありがとうございます」
御園さんは私に頭を下げ、それから大貫さんにも丁寧に頭を下げた。上品な笑みを浮かべているけれど、目が笑っていない気が……いや、気のせいかもしれない。
「ご丁寧にありがとうございます。森川社長、お知り合いですか?」
「ええ。このホテルのマネージャーの御園さんです。御園さん、こちらはうちが素材を仕入れさせていただいている商社の大貫さん。今日は彼が、打ち合わせ場所としてここに招待してくださったんです」