ベリーズカフェ15周年記念オリジナル短編『幸せのバタートースト』坂井志緒/著
彼が住んでいる部屋は、普通の客室に簡易的なキッチンとリビングを加えたような作りになっていた。床は青基調の幾何学模様の絨毯が敷かれていて、照明は柔らかい間接照明とシャンデリア。ビジネスホテルばかり利用している私には、とても広く感じる。
ベッドにはシワがないし、ホコリもないし、窓もピカピカ。まったく生活感がない中、クローゼットのそばに横倒しにされたキャリーケースだけが彼の生活を思わせた。
「白状すると、ひと目惚れだったんだ。バンケットルームで初めて明菜さんを見た時……ほら、明菜さん青いドレスを着てたでしょ? あまりに美しいものだから、まるでブルーサファイアの精が現れたかと思った」
都会の景色を望める大きな窓の前。彼は私を抱きしめ、額に、頬に、耳に、首に……と、あちこちに唇を落としながら語った。
「あっ……御園さん、ちょっと待って……」
せっかく宿題を提出してくれているところだが、彼の唇から放たれる甘い痺れに翻弄され、うまく言葉を噛み締められない。
「だから、司だってば」
「え?」
「もういい加減観念して、司って呼んでよ」
「……司、くん」
「くん付けもダメ。俺は呼び捨てにされたいの」
拗ねたように唇を尖らせ、そのまま私の唇に重ねる。ちゅ、というかわいいキスから、しっとりした色っぽいキスへと変わっていく。それだけでもう、腰が砕けそうだ。
元プレイボーイ、恐るべし。色気が半端ない。私の方が五つも年上なのに、全然主導権を握らせてもらえない。
「スタッフに任せず自分で花束を買いに走ったのは、あれが初めてだったよ。ボスケで再会できた時は、神様からのプレゼントだと思った。俺はね、ボスケがどんなに混んでても、すぐに明菜さんを見つけられるんだよ。明菜さんだけが、輝いて見えるから」
「そんな大袈裟な……」
私はただ、おいしく朝ごはんを食べているだけなのに。
「本当だよ? 普段は社長としてシャキッとしてる明菜さんが、ボスケでトーストを齧っている時にだけ見せる幸せそうな顔が、特に好き。それから……」
ベッドにはシワがないし、ホコリもないし、窓もピカピカ。まったく生活感がない中、クローゼットのそばに横倒しにされたキャリーケースだけが彼の生活を思わせた。
「白状すると、ひと目惚れだったんだ。バンケットルームで初めて明菜さんを見た時……ほら、明菜さん青いドレスを着てたでしょ? あまりに美しいものだから、まるでブルーサファイアの精が現れたかと思った」
都会の景色を望める大きな窓の前。彼は私を抱きしめ、額に、頬に、耳に、首に……と、あちこちに唇を落としながら語った。
「あっ……御園さん、ちょっと待って……」
せっかく宿題を提出してくれているところだが、彼の唇から放たれる甘い痺れに翻弄され、うまく言葉を噛み締められない。
「だから、司だってば」
「え?」
「もういい加減観念して、司って呼んでよ」
「……司、くん」
「くん付けもダメ。俺は呼び捨てにされたいの」
拗ねたように唇を尖らせ、そのまま私の唇に重ねる。ちゅ、というかわいいキスから、しっとりした色っぽいキスへと変わっていく。それだけでもう、腰が砕けそうだ。
元プレイボーイ、恐るべし。色気が半端ない。私の方が五つも年上なのに、全然主導権を握らせてもらえない。
「スタッフに任せず自分で花束を買いに走ったのは、あれが初めてだったよ。ボスケで再会できた時は、神様からのプレゼントだと思った。俺はね、ボスケがどんなに混んでても、すぐに明菜さんを見つけられるんだよ。明菜さんだけが、輝いて見えるから」
「そんな大袈裟な……」
私はただ、おいしく朝ごはんを食べているだけなのに。
「本当だよ? 普段は社長としてシャキッとしてる明菜さんが、ボスケでトーストを齧っている時にだけ見せる幸せそうな顔が、特に好き。それから……」