一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます

「どうして、そう思われるんでしょう?」
「僕から誘わないと会うこともないし、連絡もほとんど僕からです。安田さんから『会いたい』って言われたこともなくて……」
 柴田さんは膝の上で、ぎゅっと手を組んだ。
「今度こそ、失敗したくないんです」
 その言葉に、私は顔を上げた。
「失敗したくない……というのは?」
 柴田さんはしばらく黙っていた。
 やがて、小さく息を吐く。
「今度こそ、失敗したくないんです」
 その言葉に、私は柴田さんの過去を思い出した。
 柴田さんには、以前、婚約していた女性がいる。
 結婚式の日取りまで決まっていたにもかかわらず、相手の女性に別の男性がいることがわかり、婚約は破談になった。
 その後、柴田さんはしばらく恋愛から離れていた。
 仕事に打ち込み、自分の生活を大切にしてきたけれど、四十代になり、友人たちの子どもが高校生や大学生になっていくのを見ているうちに、自分だけが時間から取り残されているような気持ちになったという。
 もう一度、家庭を持ちたい。
 そう思って、昨年セレシアに入会した。
 それから二十人以上の女性とお見合いをして、ようやく安田さんとの本交際にたどり着いた。
 だからこそ、柴田さんが「今度こそ、失敗したくない」と思う気持ちは、私にもよくわかる。
 前の婚約者に裏切られた経験があるからこそ、相手の気持ちに敏感になってしまうのだろう。
「安田さんが、柴田さんをどう思っているのか。それがわからないことが、一番不安なんですね?」
「……はい」
 柴田さんは、静かに頷いた。
「でも、人によって好意の表し方は違いますから」
「好意の……表し方?」
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