一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「はい。柴田さんが、連絡をしたり会いたいと伝えたりすることで気持ちを表すタイプなのに対して、安田さんは、そういうことが得意ではないのかもしれません」
「……そうかもしれません」
「それに、安田さんは柴田さんと会っているとき、楽しそうにしているんですよね?」
「はい」
「だったら、今は『自分ばかりが好きなんじゃないか』と考えすぎなくてもいいと思います」
 私は、柴田さんに穏やかに微笑みかけた。
「それよりも、一人で答えを出そうとしないことです」
「一人で……?」
「はい。相手の気持ちを知りたいのなら、まずは自分の気持ちを伝えて、相手にも聞いてみる。それが一番早い方法だと思います」
 柴田さんは、黙って私の言葉を聞いている。
「よく、『長く一緒にいれば、言わなくてもわかる』なんて言いますよね」
「ありますね」
「でも、私はそれって、少し違うと思うんです」
 私は首を横に振った。
「どんなに長く付き合っていても、夫婦になって何年経っていても、言葉にしなければわからないことって、たくさんありますから」
「……確かに」
「『言わなくてもわかるだろう』って、実は自分の都合のいい思い込みだったりするんです」
 柴田さんが、小さく頷いた。
「自分はこんなに相手のことを思っているんだから、きっと相手も同じように思ってくれている。そう思ってしまうこともあります。でも、相手の心の中までは見えません」
「はい」
「だから、わからないなら聞く。伝えたいなら、ちゃんと言葉にする」
 私はゆっくりと言葉を続けた。
「それをせずに、『きっとわかってくれる』と思ってしまうと……本当は好きなのに、気持ちがすれ違ってしまうことだってあります」
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