一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 柴田さんは、しばらく考えるように黙っていた。
「……言わなくてもわかる、なんていうのは、迷信なのかもしれませんね」
「そうかもしれません」
 私は笑った。
「だからこそ、安田さんがどう思っているのかを想像し続けるより、少し勇気を出して聞いてみることをおすすめします」
「……聞いてみます」
 柴田さんの表情が、少しずつ明るくなっていく。
「なんだか、勇気が出てきました」
「それならよかったです」
「ありがとうございます、水野さん。安田さんと、ちゃんと向き合ってみようと思います」
「はい。その気持ちが一番大切だと思います」
 そう答えた瞬間だった。
 ふと、頭の中に湊の顔が浮かんだ。
 ――人によって、好意の表し方は違う。
 さっき自分が言った言葉が、胸の奥に引っかかった。
 ……じゃあ、私は?
 湊が私に向けているものを、私はちゃんと見ようとしているだろうか。
 それどころか、私はずっと――。
「水野さん?」
「え?」
 顔を上げると、柴田さんが心配そうに私を見ていた。
「どうかしましたか?」
「い、いえいえ。なんでもありません!」
 慌てて笑う。
「ちょっと……考え事をしてしまって。ごめんなさい」
「そうですか?」
「はい。大丈夫です」
 私は笑顔を作り直した。
 けれど、胸の奥には、さっきまでとは違うざわつきが残っていた。
 カウンセリングを終え、自分のデスクに戻る。
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