一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 そして、話題はきっと――旦那のことになる。
 普段の職場ならまだいい。
 けれど、ホテルでのパーティー。
 お酒も入るだろう。
「水野さんの旦那さんって、会社経営されてるんでしたよね?」
「どんな会社なんですか?」
「別荘ってどこにあるんです?」
「写真見せてくださいよ」
 ……絶対に聞かれる。
 いや、聞かれないほうがおかしい。
 今まで適当に相槌を打っていただけなのに、私の知らないところで勝手に成長してしまった架空の旦那様。
 その結婚生活を、根掘り葉掘り聞かれるに決まっている。
 しかも酒の席だ。
 普段なら聞かないようなことまで、勢いで聞かれる可能性だってある。
 無理。
 絶対に無理。
 どうやって切り抜ける?
 欠席するしかない。
 そう心に決めかけたときだった。
「水野さん」
 事務所の入口から声がした。
 振り返ると、社長が立っている。
「あ、おはようございます」
 挨拶をすると、社長は私を見つけるなり、手招きをした。
「水野さん、ちょっと」
「はい」
 何だろうと思いながら近づく。
 すると社長は、少し嬉しそうな顔をした。
「今度の三十周年パーティーだけど、水野さんももちろん参加するわよね?」
「あ……」
 返事に詰まる。
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