一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「……私も」
「うん」
「私も、湊が好き」
 今度は、ちゃんと言えた。
 恥ずかしくて目を逸らそうとしたけれど、顎をそっと持ち上げられる。
「もう逸らさないで」
「……恥ずかしいの」
「俺だって恥ずかしいよ」
「嘘」
「本当」
 そう言って笑った湊が、ゆっくり顔を近づけてくる。
 触れるだけの優しいキス。
 それなのに、胸の奥まで甘くなる。
 唇が離れると、湊が私を見つめた。
「これからは、遠慮しないから」
「……え?」
「好きなだけ、彩乃を甘やかす」
「そんな宣言する?」
「する」
 即答されて、思わず笑ってしまった。
 すると湊も笑う。
 その顔を見ているだけで、幸せだと思った。
 こんな日が来るなんて、少し前の私は知らなかった。
 誰かを好きになることも。
 誰かに愛されることも。
 こんなにも、心が温かくなるものだなんて。
 知らなかった。
 でも今は知っている。
 私の隣には、私を大切にしてくれる人がいる。
 そして私も、この人を大切にしたい。
 これから先、何度でも。
 何年経っても。
< 160 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop