一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「水野さん」
 顔を上げると、柴田さんだった。
「はい。どうしました?」
「あの……ちょっと相談したいことがあるんですけど」
 いつもの柴田さんとは、少し様子が違う。
 落ち着かないというか、何かを決めかねているような表情をしている。
「もちろんです。どうぞ」
 私は手元の仕事をいったん止めた。
「こちら、どうぞ」
「ありがとうございます」
 柴田さんが向かいの椅子に座る。
 けれど、座ってからもなかなか口を開かない。
 私は急かさずに待った。
 こういうとき、こちらから答えを急いではいけない。
 本人が自分の言葉で話し始めるまで待つ。
 それもカウンセラーの仕事だ。
 やがて柴田さんが、小さく息を吐いた。
「……実は」
「はい」
「俺、彼女にプロポーズしようと思ってるんです」
 一瞬、言葉が出なかった。
 けれど、それは驚いたからではない。
 胸の奥が、ふわっと温かくなったからだ。
「……プロポーズ、ですか?」
「はい」
 柴田さんは照れたように笑った。
「それで……水野さんに相談したくて」
「それで……水野さんに相談したくて」
「そうだったんですね。おめでとうございます」
 自然と笑みがこぼれた。
 柴田さんは照れくさそうに頭をかいた。
「ありがとうございます。でも、いざプロポーズするとなると、どうしたらいいのか全然わからなくて」
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