一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「はい」
「本当に夫婦だな」
「……はい」
 それだけの言葉なのに、胸がいっぱいになる。
 役所を出ると、湊さんが私の手を握り直した。
「帰ろうか」
「はい」
 その声が、いつもより優しく聞こえた。 

* * *

 家に帰ると、玄関には出かける前と同じようにサンちゃんが待っていた。
「ただいま」
 しゃがんで抱き上げる。
 サンちゃんの体温が腕の中に伝わってくる。
「おかえり」
 後ろから湊さんの声。
「……ただいま」
 振り返る。
 目が合う。
 それだけで、なぜか笑ってしまった。
「どうした?」
「なんだか……」
「うん?」
「今までと同じ家なのに、少し違って見えます」
「俺も」
 湊さんが近づいてきて、私の手を取る。
「今日から、ここが俺たちの家だな」
「……ずっとそうだったじゃないですか」
「そうだけど」
 湊さんが笑う。
「今日は、ちゃんと夫婦になったから」
 胸が熱くなる。
「湊さん」
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