一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「たっちゃん、どんな顔するかな」
「たぶん、すごく驚くと思う」
「だろうな」
 二人で顔を見合わせて笑った。
 昨日までとは違う。
 今日から私たちは、本当の夫婦だ。
 そのことを、たっちゃんにも伝える。
 そう思うだけで、なんだか嬉しくなった。



 そして出勤した私は、いつものように仕事に取りかかった。
 午前中の業務をひと通り終えたところで、安田さんが相談室を訪れた。
「水野さん、今日はありがとうございます」
「こちらこそ。少し確認したいことがあるんです」
 私は穏やかに切り出した。
「安田さんは、今お付き合いされている方との将来について、どのように考えていらっしゃいますか?」
 安田さんは少し考えてから、照れたように笑った。
「……結婚も、ちゃんと考えています」
 その答えを聞いて、私はほっとした。
「そうですか」
「はい。まだ具体的な話はしていないんですけど……もし彼からそういう話をされたら、私は前向きに考えたいと思っています」
「わかりました」
 それ以上は聞かなかった。
 彼が何を考えているのか。
 それを私から伝えることはできない。
 今日の私の役目は、安田さん自身の気持ちを確認すること。
 それで十分だった。
 その後、私は柴田さんに連絡を入れた。
「安田さんのお気持ちについて、確認が取れました」
「本当ですか?」
 電話の向こうから、明らかにほっとした声が返ってくる。
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