一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「はい。結婚について前向きに考えていらっしゃるそうです」
「ありがとうございます!」
 その声に、私まで嬉しくなった。
「それで、柴田さんはどのようにプロポーズするおつもりですか?」
「実は、彼女が前から行きたいと言っていたレストランを予約しました。そこで伝えようと思っています」
「それなら、いいと思います」
 私は笑った。
「きっと安田さんも喜ばれると思いますよ」
「はい。頑張ります」
「頑張ってください。私も応援しています」
 電話を終え、私は小さく息を吐いた。
 二人の未来が、うまくいけばいい。
 そんなことを思いながら、午後の仕事へ戻った。
 そして、その日の業務を終える。
 時計を見ると、約束の時間が近づいていた。
 私は急いで身支度を整え、最寄り駅へ向かった。



 駅で湊さんを待っていると、改札から出てくる人の流れの向こうに、見慣れた姿が見えた。
 湊さんだ。
 スーツ姿で、こちらへ向かって歩いてくる。
 その姿に気づいた何人かの女性が、ちらちらと湊を見ていた。
 ……やっぱり、目立つんだ。
 以前からそうだった。
 整った顔立ちに、すらりとした長身。
 ただ歩いているだけなのに、視線を集めている。
 私は思わず苦笑した。
 でも――
 今日は、少しだけ嬉しい。
 だって、この人は私の夫なのだから。
「彩乃」
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