一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 しばらくして、店を出る時間になった。
 外まで見送りに出てきたたっちゃんが、最後にもう一度、湊の肩をぽんと叩く。
「湊」
「はい」
「彩乃のこと、頼んだで」
「はい」
「幸せにしたってな」
「もちろんです」
 湊さんの返事に迷いはなかった。
 たっちゃんは満足そうに頷く。
「……よっしゃ」
 そして、次の瞬間。
「ところで結婚式はいつや?」
「え?」
 私が固まる。
「結婚式!」
「まだ何も決めてないよ」
「俺が仕切ったる!」
「絶対嫌!」
「なんでや!」
「たっちゃんに任せたら絶対大変なことになる!」
「失礼やな!」
「なるよ!」
「湊、お前からも言うたれ!」
 突然話を振られた湊が、少し考えてから笑った。
「……たつさんには、司会をお願いしましょうか」
「おう!」
「でも、企画は任せません」
「なんでや!」
 夜の街に、たっちゃんの叫び声が響き渡った。
 私は湊さんの腕にそっと寄り添った。
 笑い声の中で見上げたその横顔は、どこまでも幸せそうだった。
 私も、同じだった。
 たっちゃんに祝ってもらえて。
 大好きな人と夫婦になれて。
 これから先も、この人と一緒に歩いていける。
 その幸せを胸いっぱいに感じながら、私は湊の腕にもう少しだけ身体を寄せた。
「帰ろうか、彩乃」
「うん」
 私たちは並んで歩き出した。
 これから始まる、夫婦としての日々へ。
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