一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 しばらくそうして遊んでいたけれど――。
「……あ」
 ふと、我に返った。
 膝の上で気持ちよさそうに丸くなっているサンちゃんを見下ろしながら、私は瞬きをする。
 いったい、私は何をしているんだろう。
 さっきまで荷物の整理をしていたはずなのに。
 ほんの少し休憩するつもりだった。
 それが、サンちゃんがあまりにも可愛くて、つい夢中になってしまった。
 けれど、私は遊びに来たわけじゃない。
 ここで一か月、湊さんの妻として暮らすために来たのだ。
 そのことを思い出すと、途端に背筋が伸びるような気がした。
 しかも、湊さんは七時には帰ってくると言っていた。
 壁の時計を見る。
 まだ時間はある。
 けれど、だからといってのんびりしているわけにもいかない。
「……夕飯、どうしよう」
 私はソファから立ち上がった。
 せめて夕飯くらいは、私が作らなきゃ。
 夫婦として一緒に暮らすのだから、何かひとつくらいは私もできることをしておきたい。
 それに、湊さんは仕事で帰りが遅くなると言っていた。
 そんな人を待たせて、何も用意していないというのも、なんとなく気が引ける。
 とはいえ、私の料理のレパートリーなんて、肉じゃがとか、ハンバーグとか……。
 あと焼き魚って、料理のうちに入るのかな。
 自分で考えておきながら、ちょっと不安になる。
 私は料理が苦手というわけではない。
 ただ、一人暮らしでは、わざわざ手の込んだ料理を作ることもなかった。
 一人なら、簡単に済ませてしまうほうが楽だ。
 仕事から帰って、疲れているところで何品も作る気にはなれない。
 だから普段は、簡単なものばかり。
 それなのに今日は、二人分の夕飯を作ろうとしている。
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