一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます

  今日は、どこへ行くんだろう。
  初めてのデート。
  そう思った途端、また胸が少しだけ騒がしくなった。
  車が走り出す。
  最初のうちは、窓の外を眺めながら、私は何となく落ち着かない気持ちでいた。
  けれど、湊さんは無理に話しかけてくることもなく、車内には穏やかな時間が流れていた。
  しばらく走ると、高速道路に入った。
  窓の外を流れていく景色を眺めながら、私はふと気になった。
 「湊さん、今日はどこに行くんですか?」
 「ん?」
 「ずっと『一日空けておいて』としか聞いていないので……」
  湊さんはハンドルを握ったまま、少しだけ笑った。
 「趣味と、普段の休日の過ごし方かな」
 「え?」
 「行けばわかるよ」
  やっぱり、行き先は教えてくれないらしい。
  私は小さく息を吐いて、隣にいるサンちゃんへ視線を向けた。
  隣では、シートベルトで固定したハーネスをつけたサンちゃんが、いつの間にか丸くなっている。
  車の心地よい揺れが眠気を誘ったのか、すっかり眠ってしまったようだ。
 「ふふ。寝ちゃいましたね」
 「もう寝ちゃったの?」
  湊さんがバックミラー越しにサンちゃんを見て、呆れたように笑う。
 「この子、車に乗るとすぐ寝るんだよ」
 「気持ちいいんでしょうね」
 「まあ、それでいいならいいけど」
  そう言いながらも、湊さんの声はどこか嬉しそうだった。
  私は眠っているサンちゃんを眺めてから、少し迷って口を開いた。
 「あの……質問していいですか?」
 「何?」
 「湊さんのご両親って……」
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