一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 くすっと笑われる。
「本当に旦那さんとどこか行ったんだ」
「……」
 何も言い返せなかった。
 これまで私は、旦那は仕事が忙しいから、と言っては、彼の話をうまくかわしてきた。
 だからきっと、みんなの中では――。
 私の旦那は、ものすごく仕事が忙しくて、休日に一緒に出かけることなんて滅多にない人になっている。
 なのに。
 昨日は、一日中一緒にいた。
 そのことを思い出しただけで、また頬が熱くなった。
「へえ……」
「な、なんですか」
「いえ。よかったですね」
「……何がですか?」
「旦那さんと出かけられて」
 そう言って笑われる。
「……はい」
 なぜか、その一言が嬉しかった。
 それから、数日が経った。
 その日の仕事も終わりに近づき、私はパソコンの画面を確認しながら、最後のメールを返信していた。
 そろそろ帰ろうかな。
 そう思ったとき、スマートフォンが震えた。
 画面を見ると、湊さんからだった。
 ――仕事、何時ごろに終わる?
「……え?」
 思わず声が漏れた。
 湊さんから連絡が来ること自体、珍しい。
 しかも、こんなふうに仕事の終わる時間を聞かれるなんて。
 胸が、どきんと鳴った。
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