一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
お見合いで何か大きな失敗をしたわけではない。
相手を不快にさせるような発言があったわけでもない。
だからこそ、三好さんにとっては余計に納得できないのだろう。
「なのに、どうして……」
消え入りそうな声だった。
私は一度、手元の資料へ目を落とした。
お相手から届いた返答には、三好さんを否定するような言葉は書かれていない。
ただ、結婚後の生活について、少し気になる点があった――そういう内容だった。
婚活では、こういうことが珍しくない。
本人にとっては何気ない一言でも、それを聞いた相手が自分とは違う価値観を感じ取ることがある。
逆もまた同じだ。
だから私は、できるだけ三好さんを責めるような言い方にならないよう、言葉を選んだ。
「三好さん。お相手の方からいただいたお返事ですが、少し気になる点があったようです」
「気になる点……?」
「はい」
私は顔を上げた。
「お見合いのとき、お相手の方から『結婚したら、どんな生活をしたいですか?』と聞かれませんでしたか?」
三好さんは少し考えるように視線を上げた。
「ああ……。聞かれました」
「そのとき、なんと答えました?」
「えっと……」
三好さんは首を傾げた。
そして、思い出したように口を開く。
「仕事は辞めたいと思っています、って」
「はい」
「それで、養ってくれる方がいるので、って答えました」
三好さんはそこで言葉を切った。
「……それが、いけなかったんですか?」