一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「これ……」
 私は庭を指差した。
 自分でも何を聞きたいのかわからない。
 けれど、これだけは聞かずにはいられなかった。
「……何ですか?」
 湊さんは、庭に張られた大きなテントを振り返った。
 そして、まるで大したことではないと言うように、笑った。
「キャンプ」
「…………キャンプ?」
「そう。今日」
「今日……?」
 思わず聞き返す。
 湊さんは頷いた。
「今日は仕事、半日で終わったから」
 そう言われても、私の頭はまだ追いついていなかった。
 半日で仕事が終わった。
 だからキャンプをしようと思った。
 ……どうして?
 しかも、わざわざ庭にテントを張って。
 私が呆然としていると、湊さんが少しだけ不安そうに私の顔を覗き込んだ。
「……嫌だった?」
「え?」
「こういうの」
 そう言って、庭を指差す。
 私は慌てて首を振った。
「いえ!」
 思ったより大きな声が出た。
「嫌じゃないです」
「本当に?」
「はい。むしろ……」
 もう一度、庭を見る。
 夕暮れの庭に、大きなテント。
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