一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 その横にはバーベキューコンロ。
 焚き火台まである。
 なんだかおかしくなって、私は笑った。
「楽しそうです」
 そう答えると、湊さんの表情がふっと緩んだ。
「よかった」
 その顔を見て、胸の奥が少しだけ温かくなる。
 さっきまで「自分は湊さんに何を求めているんだろう」なんて考えていたのに。
 こんなふうに、私を驚かせることを思いついて。
 私が喜ぶかどうかを気にして。
 そして、私の「楽しい」を自分のことのように喜んでくれる。
 そんな湊さんを見ていると――。
 さっきの問いが、また胸の中に浮かんだ。
 私は、本当は何を求めているんだろう。
 その答えは、まだ見つからない。
 けれど。
 今、この瞬間が楽しいと思っていることだけは、はっきりとわかった。
 テントの中を覗いてみると、すでに寝袋まで用意されていた。
 その隣には、クーラーボックスやランタンも置かれている。
 どうやら本当に、今日はここでキャンプをするつもりらしい。
「すごい……」
 思わず、声が漏れた。
 庭にテントが張られているだけでも驚いたのに、中まできちんと準備されている。
 寝袋も二つ。
 ランタンもある。
 クーラーボックスまで用意されていて、まるで本当にキャンプ場へ来たみたいだった。
 けれど、ここは私たちの家の庭だ。
 そう思うと、なんだか可笑しくなって、頬が緩んだ。
 こんなことを考えるなんて、湊さんらしいのか、らしくないのか。
 一緒に暮らし始めてから、私は少しずつ湊さんのことを知ってきたつもりだった。
 仕事では何事もそつなくこなして、家のことだって手際がいい。
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