氷の君に、恋の歌を。
次の瞬間、蓮斗の手がそっと乃愛の頬に触れた。

「乃愛」

呼ばれただけで、胸が熱くなる。

「今の、反則」

「え?」

「こんな夜景より、乃愛のほうがずっとやばい」

真顔でそんなことを言われて、乃愛は一気に赤くなる。

「もう……」

「ほんとだ」

そう言って蓮斗は、やさしく乃愛を抱き寄せた。
夜景を背にしたその腕の中は、あたたかくて安心するのに、胸は苦しいくらい高鳴る。

「何回でも言う」

耳元で落ちた低い声に、乃愛の肩が小さく揺れる。

「好きだよ、乃愛」

その言葉は、きらめく街の灯りよりもずっとまぶしかった。
夜景の中で交わした想いは、きっとこれから先もふたりの中に残り続ける。
ただの帰り道じゃない。
大切な気持ちを何度でも確かめ合う、ふたりだけの特別な夜になった。
< 109 / 114 >

この作品をシェア

pagetop