氷の君に、恋の歌を。
帰り道、並んで歩く影が夕日に伸びる。
無口な彼と、まだうまく笑えない自分。
それでも不思議と、沈黙は苦しくなかった。

ふと、蓮斗が言う。

「森下」

「なに?」

「乃愛って呼んでいいか」

足が止まりそうになる。

「え……」

「嫌ならいい」

そんなふうに言われたら、嫌だなんて言えるわけがない。

乃愛は頬を赤くしながら、小さくうなずいた。

「……私も、蓮斗くんって呼んでいい?」

一瞬の静寂。
次の瞬間、蓮斗はほんの少しだけ笑った。

本当に、少しだけ。
でもその笑顔は、春の冷たい空気を溶かしてしまうくらい、きれいだった。

「それなら公平だ」
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