氷の君に、恋の歌を。
並んで歩いていると、ふいに蓮斗の手が乃愛の手を探るように触れた。
そしてそのまま、自然に指を絡めてくる。

「っ……」

「嫌か」

「嫌じゃないけど……」

「じゃあいい」

真顔のままなのに、どこか満足そう。
いつもより少しだけ強く握られる手に、乃愛の胸がくすぐったくなる。

「ほんとに機嫌いいんだね」

「乃愛のせい」

またその言い方。
でも今日は、少しだけ意味が違う気がした。

「私、何かした?」

そう聞いた瞬間、蓮斗が立ち止まる。
そして夕日に照らされた道の真ん中で、まっすぐ乃愛を見た。

「しただろ」

「え……」

「教室で」

その一言で、乃愛の顔が一気に熱くなる。

「あ……」

「自分からしてきた」

低い声で確認するみたいに言われて、心臓が跳ねた。

「それは……した、けど……」

「それがうれしかった」

あまりにも素直な答えに、乃愛は何も返せなくなる。
< 85 / 114 >

この作品をシェア

pagetop