氷の君に、恋の歌を。
また歩き出したあとも、蓮斗はずっと手を離さなかった。
むしろさっきより、少しだけ近い。

「今日の乃愛、反則だった」

「ええっ」

「いつも俺ばっかりじゃなくて、乃愛から来るの、だめだ」

「だめなの……?」

「うれしすぎて困る」

その言葉に、乃愛は思わず笑ってしまう。

「困ってるように見えないよ」

「見えなくていい」

さらっと返されて、またどきっとする。

「でも」

蓮斗が声を落とす。

「俺だけが知ってる乃愛でいてほしいって、いつもより強く思った」

夕暮れの風がふたりの間を通りすぎる。
なのにその言葉だけは、まっすぐ熱く胸に残った。

「今日のあれ、俺だけのだろ」

「……うん」

「ならいい」

確認するみたいな言い方が甘くて、独占欲まで愛おしく思えてしまう。
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