氷の君に、恋の歌を。
少し歩いたところで、乃愛は勇気を出して小さく言った。

「でもね」

「ん?」

「私も、うれしかったよ」

「何が」

「蓮斗くんがあんな顔するの」

「どんな顔」

「余裕なくなる顔」

言った瞬間、蓮斗がぴたりと足を止めた。

「……乃愛」

「え」

「それ以上言うな」

低い声。
でも怒っているわけじゃない。
むしろ照れているのがわかって、乃愛は少しだけ楽しくなる。

「もしかして、照れてる?」

「照れてない」

「絶対うそ」

そう言って笑うと、蓮斗はほんの少しだけ目を細めた。

「そんなに余裕あるなら、今ここでまたしたくなる」

「っ……!」

一瞬で乃愛の顔が真っ赤になる。
やっぱり勝てない。
少しでもからかうと、すぐに何倍にもなって返ってくる。
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