氷の君に、恋の歌を。


放課後。
帰り支度をしていると、担任の先生が教室に入ってきた。

「来月の校内音楽祭、各クラスで参加希望を出してもらうからな」

その言葉に、教室がにわかに盛り上がる。

「合唱やる?」
「楽しそう!」
「伴奏どうする?」

音楽祭。
その単語だけで、乃愛の指先が冷たくなった。

だめ。
考えちゃだめ。
関わるなんて無理。

席を立とうとしたとき、隣から声がした。

「森下」

振り向くと、蓮斗が立っていた。

「少し話せるか」

昼と同じ階段の踊り場。
夕方の光が差しこんで、彼の横顔をやわらかく照らしている。

「さっきの続き」

「続き?」

「君、また歌えるようになる」

あまりにまっすぐ言われて、乃愛は目を見開いた。

「む、無理だよ。簡単じゃないもん」

「簡単だとは言ってない」
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